どこまでも続く水平線の碧
いまにも届きそうな空の蒼
思わず伸ばした手の先を
季節の風がそっと浚った
雲が少しずつかたちを変えて
夕凪が夜を連れてくる前に
僕が感じたこの景色を
君の瞳にも伝えたい
h o r i z o n b l u e
ここは音仲間が住む町にある海岸
天気は晴れ。雲量４。
おもむろに 砂浜に寝転がった海音は
エンドレスリピートで繰り返す波の音に耳を傾けていた。
「こうしていると、何だか空と海に吸い込まれそうだなあ…
真っ青で…きらきらしてて綺麗だし……」
最近の海音は疲れていた。
海音の作る曲は美しい旋律と心安らぐハーモニーが特徴だ。
最近 ほうぼうから注目されていることもあり、
作曲の注文が沢山入り、スケジュールはいっぱい。
初めての事態に戸惑いながらも、
順調に曲を作り、仕事をこなしていく海音。
しかし、ここで問題が発生してしまった。
曲が思うように上手く進まないというか、作ることができないのだ。
最初の出だしやフレーズは以前のように思いつくのに、
“繋ぎ”の部分で どうしたらいいのか分からなくなってしまう。
毎日毎日自室に篭って作曲三昧。延々と続く悩みと葛藤。
誰とも会わずにカンヅメになっていたことも相まって、疲れは溜まる一方。
気分転換に、と
久々の外気を吸いにふらりと外に出たところ、
いつの間にかこの海岸に来ていたのだ。
「はぁー…疲れたなあ……
あーあ…何だかもう…全部どうでもいいと思えてくる程に、
綺麗な空と海だなあ……はぁ……」
口を継いで出てくるのは溜息と疲労を匂わす言葉達ばかり。
目線は宙を泳いだままで、
手の届くはずもない空へと手を伸ばす。
「このまま…この中に溶けていけたらいいのに……
…あっ」
異変に気付いた海音は体を起こし、
重くなってしまった衣服を引っ張った
「ははっ…服が中までびしょびしょだ…
あははっ…なあ、そら…ね…？」
隣を振り向いた海音は あっ と口を塞ぐも、
発した言葉は隣にいるはずもない誰かの場所をすり抜け、
ただ、波が奏でる唄に吸い込まれていっただけだった。
「そういえば、いつだって…
どんな時も空音が傍にいたっけ……」
俯いて眺めるは 後ろめたき 影法師
空音という娘は
海音の幼馴染でいつも一緒にいた音仲間であるのだが、
今は海音がカンヅメになっていることを察して、
ずっと海音の家には来ていない。
思えば、電話でさえも話していない。
もう、２週間になる。
「空音…元気かな……
この綺麗な景色を空音と一緒に見たかったな……」
また、手を伸ばす。
どんなに見上げようと、どんなに背伸びをしようと、
届かない空。真っ青な空。白い…雲。
「うぅ…何やってんだろな…俺……」
涙が溢れてきた。
海面が涙と波で激しく揺らぐ。
“繋ぎ”が作り出せないのだ。
どうしても、不安になってしまって。
手 が 、 止 ま る 。
風 が 、 吹 い た
ふ わ り と 、 海 音 の 手 を 浚 っ た
雲が形を変え、刻々と変化を遂げる、空
それを優しく、時には激しく映し出す、海
交わる、トコロ
繋がる、トコロ
真っ直ぐ見据えた、一対の双鉾
「地平線が…青に染まってる……」
気が付いたら 走り出していた。
イッタイ ドコヘ？
― 大切な あの娘の元へ。
くるくる回る 白の表情
ふわりと纏う 季節の風
流れる波の子守唄と
煌めく青色と
ドウシテ
今マデ 気ガ付カナカッタンダロウ
行き先を告げる 青信号
地平線 の 青
夕凪が夜を連れてくる前に
僕が感じたこの景色を
君の瞳にも伝えたい
そ れ は フ ェ ル マ ー タ
“ 繋 ぎ ” を 作 り 出 す 青 色
PR
